写真展「土門拳の古寺巡礼」
ドキュメント、人物、古美術、建築、風景、そのいずれにも忘れがたい作品を残し、日本の写真史に巨歩を記した土門拳。そのなかでも土門のライフワークとなった「古寺巡礼」は、1939年の暮れに室生寺を訪ねたことから始まりました。奈良県の山間にひっそりと建つこの美しい寺は、平安時代初期の木彫仏(弘仁仏)の宝庫であり、土門はひと目で魅了されます。以後、北は会津から南は九州まで、仏像撮影の行脚を続けることになりました。土門は、鋭い眼差しで被写体を凝視し、自らが惹かれたものだけを撮り続けます。その視線は、仏像の手や足、口元など細部にクローズアップした写真の中で特徴的に表わされています。2度の脳出血により車椅子での撮影を余儀なくされても、写真を撮り続けた不屈の写真家・土門拳。日本を愛し、日本人を愛した土門拳が撮影した永遠の名作「古寺巡礼」。大型作品を含む約170点でその魅力に迫ります。
構成
1「土門拳の好きなもの」(カラー)
三仏寺投入堂、薬師寺三重塔、室生寺五重塔、高山寺石水院
神護寺薬師如来像、薬師寺聖観音像、臼杵石仏群
この7つを土門拳は「ぼくの好きなもの」という文章で取り上げ、その理由を「豪壮で強い」「非常に個性的」であるからとしています。
2「土門拳の古寺巡礼」(カラー)
『古寺巡礼』(美術出版社・昭和38年~50年刊 桐箱入り A3判)5冊より、選んだ作品を収録。土門が独自の美意識で選んだ日本美術の「精華」です。
3「土門拳の仏像行脚」(モノクロ)
土門拳が昭和10年代から昭和40年代までに撮影したモノクロの仏像作品で構成。とくに好きだった平安初期の量感溢れる木彫仏を中心に、日本の仏像の造形美を捉えた迫真の作品を収録します。
4「母なる寺・室生寺」(モノクロ・カラー)
土門拳は最初の出合いで山里にひっそりと建つ美しい堂塔や木彫仏に魅了され、戦前戦後を通じ室生寺に40年間通いつめました。
敗戦後、室生寺を訪れて再び寺めぐりを決意、昭和29年に写真集『室生寺』を刊行します。そして昭和43年、2度目の脳出血で倒れ、車椅子生活になっても撮影を敢行しました。このように室生寺は、土門の写欲を生涯にわたって刺激した母なる寺です。
戦前のモノクロ写真から最後の古寺巡礼作品となった昭和53年の雪の室生寺まで、土門の足跡をたどります。