2023.06.14PUBLISHING

写真集『The Coral Triangle 〜密林珊瑚〜』
古見きゅう

聴こえますか、珊瑚の息吹。

パプアニューギニア、フィリピン、インドネシアを結ぶ赤道直下の三角地帯「コーラル・トライアングル」。そこは世界の造礁サンゴ約500種、3,000種を超える魚類が暮らす海のジャングルであり、まさに生命の坩堝。ここから無数の生命が誕生し育まれ、やがてそれらは日本の海へと辿り着く。
本書は、「コーラル・トライアングル」を題材に約20年に渡りこの地域を見つめ続けてきた水中写真家 古見きゅうが贈る生命の一冊です。

<コーラル・トライアングルとは>
熱帯雨林のジャングルとは。鬱蒼と茂る木々、熱っぽく蒸せる空気。鼻をつく深い緑の匂いと絡み合う果実の腐敗臭。木漏れ日の隙間から甲高く響く鳥の声、生き物たちの気配。あらゆる混沌の要素を内包する密林。

南洋に浮かぶ島々のジャングルは、生き物たちの生活の場となり、守り、大気までも浄化する。人類が誕生するずっと前から地球環境の正常化を何役にも渡り担ってきた。それと同様に、もしくはそれ以前から海の環境を正常化させ続けている生き物たちが海中に生息する。それがサンゴ。サンゴたちは魚をはじめとする多くの生き物たちの餌場であり、社交場であり安全なシェルターとなる。そして体内に共生させている褐虫藻(かっちゅうそう)が光合成を行い、二酸化炭素を吸収し酸素を放出し、海を浄化していく。まさに海の森林と称するに値する存在。

「コーラル・トライアングル」という言葉を耳にしたことがあるだろうか?大きくフィリピン、インドネシア、パプアニューギニアを結ぶ、赤道直下南太平洋の三角地帯には、地球上に存在するサンゴの半分以上となる約500種が生息する。赤道海流として、アメリカ方面からコーラルトライアングルに流れ込む巨大でありながらも貧栄養の潮流は、豊穣のサンゴを起因としてもたらされたプランクトンなどの恵みを乗せ、島々によって撹拌され規模と量を拡大し、海をより豊かなものにする。時間の経過とともに無造作に積み重ねられ、淘汰と繁栄を繰り返して茂るサンゴ群生は、やがて『サンゴ礁』となる地球の歴史。いわば無垢の自然の姿。

猛々しい牛角の如く力強く聳えるサンゴを、吹雪のように虹色の魚が渦巻き、隙間に極小の魚たちが踊る。まるで魑魅魍魎のように摩訶不思議な容姿と生態をもった生き物を育み、海の守護神のような大型の海洋生物までもが一堂に会する海のカオス。

「コーラル・トライアングル」はまさに坩堝。ここから無数の生命が誕生し育まれ、やがてそれらは日本の海へと辿り着く。西部太平洋のサンゴの起源とも呼ぶことができる密林珊瑚の熱気とエネルギーを、視覚から五感を刺激し、本書では命の循環や環境にも触れて紹介します。


  • 3,300円(税込)
  • 発売時期:2023年7月発売予定
  • サイズ:B4変形(縦238 × 横240)並製
  • ページ数:180頁 フルカラー
  • ISBN:978-4-909532-99-2