生涯現役を貫き、昨年93歳で逝去した写真家が半世紀余りにわたり写し続けたライフワーク。

写真家として初めて文化勲章を受章。生涯現役を貫き、昨年2022年に93歳で逝去された写真家・田沼武能。ライフワークでもあった武蔵野の作品群は、現在の東京都西部をはじめ、北は埼玉県、南は神奈川県の北東部まで、古くは武蔵の国と呼ばれた地域を対象に、1964 年から2022 年までのおよそ半世紀を越えて撮影されたものです。田沼のこころのふるさとともいえる武蔵野の四季折々の風景は、時代の流れと共に激しく変貌しましたが、残された原風景とそこに生きる人びとの姿を描きとりました。

「……私はそんな四季折々の武蔵野で生きる人びとと暮らしを写真に収め続けています。そこにはコンピューター万能の時代風潮から離れた昔ながらに連綿と続く人のこころのつながりがあります。厳しい農作業、そして収穫の後の祭りや祝い事など、私が訪れるたびに、まるで「ふるさと」に帰るような安らぎを与えてくれるのが武蔵野です。」
（本書・序文「安らぎ与える武蔵野」より抜粋）