2020.06.09EXHIBITIONS

田沼武能写真展「わが心の東京」

田沼武能氏が、2019年11月3日、写真の分野では初めてとなる文化勲章を受章されました。この受章は、写真家として独自の世界を確立し、現役を貫いて精力的に作家活動を続けるとともに、写真界や大学において後進の育成や写真家の地位向上にも尽力され、斯界の発展向上に貢献されてきたことによるものです。なお、同様の理由で2019年度の朝日賞特別賞を受賞されました。

1929年、東京・浅草の営業写真館に生まれた氏は、東京写真工業専門学校(現・東京工芸大)を卒業後、サン・ニュース・フォトスに入社、木村伊兵衛に師事して写真の道に入ります。小説家や画家などのポートレイト、武蔵野、東京の下町風景、子どもの世界、ヨーロッパ古寺巡礼、戦争や自然災害に苦しむ難民キャンプの子どもたちなど、実に多くの対象にレンズを向けて、写真表現の可能性にエネルギッシュに挑戦し続けて70年余、今なお現役で活躍されています。
田沼氏の基底にあるものは、生まれ育った「東京」の原風景ですが、報道写真家を志した原点は、大空襲の炎を辛くもかいくぐり、一夜にして灰塵と化したわが街東京を目の当たりにした16歳の生々しい記憶にあります。一歩ずつ活気を取り戻していく街の路地には、必ず失意の底から立ち上がり必死に生き抜こうとする人々のたくましい姿があり、氏が撮り続けてきた大都市東京の復興と発展は、常にそこに息づく「人の営み」と表裏をなしています。
本展では、同氏がそのファインダーを通して真摯な眼差しで見つめ続けた「人」を軸に、「戦後東京」の復興、「大都市東京」の発展・変貌をとらえた力作をセレクトし、半生を振り返ります。


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2020年